糖尿病改善のポイント |
2011/08/25 カテゴリー/健康110番
① ブドウ糖(グルコース)の細胞内への取り込みと糖代謝
② インスリン受容体(インスリン受容体の感受性)
③ GLUT4(糖輸送体タンパク質)
④ AMP(アデニル酸)キナーゼ≪AMPK≫とブラジキニン・・・運動
⑤ アディポサイトカイン(脂肪細胞より分泌される生理活性物質)
⑥ 腸内細菌叢(腸内フローラ)
⑦ 膵臓のβ細胞の再生・・・(未来的?)
骨格筋細胞(血糖の約70%を取り込む)や脂肪細胞における細胞内へのグルコースの取り込みは、大きく二つの経路を通してなされます。
一つは、インスリンと骨格筋細胞の細胞膜に発現するインスリン受容体が結合すると、インスリン受容体基質であるIRS-1タンパク質を介したシグナル伝達を通して、細胞内の糖輸送体タンパク質であるGLUT4が細胞膜にトランスロケーション(転移)して細胞内にグルコースを取り込む経路であります。
もう一つは、運動(筋収縮)やアディポネクチン(善玉アディポサイトカイン)により細胞内のAMPKが活性化されたり、運動によって筋肉で産生されるブラジキニン(血管拡張作用がある)の作用によって、GLUT4が細胞膜表面にトランスロケーションしてグルコースが細胞内に取り込まれる経路であります。
インスリンの作用
・・・グリコーゲンの合成を促進、解糖を促進、糖新生を抑制し、血液中のブドウ糖の濃度を一定に保つ働き。
1) 肝臓での糖新生を抑制し、グリコーゲン合成を促進することで、肝静脈への
ブドウ糖放出を抑制する。
※ 肝臓での糖の取り込みはインスリンの作用に依存しないGLUT2より
行われる。
2) 筋肉、脂肪細胞では、グルコース(ブドウ糖)の細胞内への取り込みを促進
する。
3) 食事後に、肝臓での糖新生を抑制し、骨格筋や肝臓での糖の取り込みを
増加させ、上昇する血糖値を低下させる。
4) 筋肉(骨格筋、心筋)、脂肪細胞で、糖輸送体(GLUT4)の発現を増加させ、
グルコースの取り込みを10~20倍増加させる。
5) 筋肉、脂肪組織で、細胞内へのグルコースの取り込みを促進させ、グリコー
ゲン(筋細胞)や中性脂肪(脂肪細胞)として貯蔵させる。
糖尿病は、細胞内への糖の取り込みがうまく行かず、血中にブドウ糖が溢れている状態で、血糖値が高くなる状態をいいます。
特にⅡ型糖尿病(生活習慣病)の場合、インスリンがしっかり出ていても、インスリン受容体の感受性が悪くなって(インスリン抵抗性)、その結果シグナル伝達がうまく行かず、糖の取り込みがうまく行かないというケースが多いです。
このようにみると糖尿病は一種の代謝異常であると言えます。
しかし、適度な運動(有酸素運動)などによって、上記のように細胞内にグルコースを取り込むことも出来ます。
このようにして取り込まれたグルコースはエネルギー源としてのグリコーゲンとして貯蔵され、必要に応じて解糖系やミトコンドリア内のクエン酸サイクルを通してエネルギーとして利用されます。
最終的にグルコースは燃焼によって二酸化炭素と水となり、体外に排泄されるようになります。
さて、Ⅱ型糖尿病の発症の原因について簡単にみてみましょう。
糖尿病では、筋肉のタンパク質合成が低下し、血中のアミノ酸濃度が上昇し、肝臓でのアミノ酸からの糖新生が亢進しています。
糖尿病では、食後には、肝臓の門脈血からの糖の取り込みや、筋肉や脂肪細胞の糖取り込みが低下し、糖新生が抑制されず、糖放出の抑制が低下し、食後高血糖となります。
ところで、糖尿病の最初の発端は肥満からとされ、特に、脂肪細胞の増加や肥大化が主な原因とされています。
直径が70~90μmの成熟脂肪細胞が高カロリーと運動不足によって、直径が130~140μmの肥大化脂肪細胞になると、悪玉アディポサイトカインであるアンジオテンシノーゲン(血圧上昇に関与)やMCP-1(マクロファージ集積に関与)やPAI-1(血液凝固促進/血栓形成促進)を分泌し、更にTNF-α、レジスチンなどの分泌亢進を促進します。
また、善玉アディポサイトカインであるレプチン(肥満中枢を刺激して摂食抑制を行う)やアディポネクチン(インスリンの感受性に関与)分泌低下をまねきます。
更に、脂肪細胞が肥大化すると、特に内臓の脂肪細胞から遊離脂肪酸が遊離され、この脂肪酸は褐色脂肪細胞で燃焼されますが、一部骨格筋や肝細胞へも運ばれます。
この様にして運ばれた脂肪酸はプロテインキナーゼを活性化し、タンパク質のセリン残基がリン酸化され、結果的にIRS1以降のシグナル伝達が阻害され、GLUT4を膜に輸送できず、インスリン抵抗性となります。
悪玉アディポサイトカインであるTNF-αもこのような過程を通してGLUT4の発現を抑制し、インスリン抵抗性を示します。
更に、脂肪細胞が肥大化すると、活性酸素の産生が増加し、インスリンの感受性を上げる作用のあるアディポネクチンの発現が抑制されます。
一方、ミトコンドリア内に輸送された脂肪酸は、β酸化によって代謝されることによって、細胞内の脂肪酸が少なくなり、インスリン抵抗性は改善されます。
また、アディポネクチンが骨格筋上のアディポネクチン受容体に結合すると、AMPキナーゼが活性化され、運動効果と殆ど類似の作用を示すようになります。
更に、アディポネクチンがPPARα(転写因子)を活性化することによって、脂肪酸の燃焼に関連する酵素が産生されることも明らかになっています。
アディポネクチンの作用
1) インスリン受容体を介さない糖取り込み促進作用
2) 細胞内の脂肪酸を減少させ、インスリン受容体の感受性を上げる作用
3) 脂肪酸の燃焼
レプチンもアディポネクチンとほぼ同様に、インスリン抵抗性を改善することが分かっています。
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