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2024/04/26  カテゴリー/

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ワールブルグ効果と「がん」の夜明け>解糖系生命体とミトコンドリア生命体

2015/06/28  カテゴリー/医療

イギリスのレディング大学生物科学部のPhilippa Darbre博士は、「Jounal of Applied Toxicology」(応用毒物学)誌で2004年に、乳がん患者20人の乳房腫瘍細胞組織を分析した結果、全員からパラベン(発がん物質)が発見されたと発表し、その中で18人では更に多量のパラベンの蓄積が見られたと報告しました。

 

このことは、当時世界的に反響を呼びましたが、その後、2012年1月に出版された「Jounal of Applied Toxicology」誌に、再び同博士は、今度は乳がん患者40人を対象に同様の分析をした結果、全ての乳房組織からパラベンが検出されたと発表しました。

 

これは乳がん細胞とパラベンの密接な因果関係を示唆する重要な研究発表として注目されています。

 

参照:http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/jat.1786/abstract

 

<参考リンク>:

http://www.dailymail.co.uk/health/article-2085585/Parabens-Chemical-everyday-items-needs-investigation-scientists-discover-tumours-ALL-breast-cancer-patients.html

 

がん細胞の研究で非常に謎とされてきた事柄に、「腫瘍学(特にがん細胞)におけるワールブルグ効果」と言うものがあります。

 

ドイツの医師であり生理学者で、1931年にノーベル生理学・医学賞を受賞したオットー・ワールブルグ(1883~1970)が、1955年に、「体細胞は長期間低酸素状態に晒されると呼吸障害を引き起こし、通常酸素濃度環境下に戻しても大半の細胞が変性や壊死を起こし、ごく一部の細胞が酸素呼吸に代わるエネルギー産生経路を亢進させて生存する細胞が癌細胞となる」という説を発表しました。

 

これは、がん細胞(悪性腫瘍)内では、嫌気(無酸素)環境だけでなく、好気(有酸素)環境でも解糖系に偏ったブドウ糖代謝が行われていると言うことですが、これをがん細胞における「ワールブルグ効果」と言います。

 

解糖系では、ブドウ糖1分子あたり2分子のATPしか産生されませんが、酸化的リン酸化では36分子のATPを産生できます。
ですから、ミトコンドリアで効率的にエネルギー産生を行う方が、細胞の増殖に非常に有利であると考えられるのに、がん細胞が酸化的リン酸化によるエネルギー産生システムをなぜ使用しないかが長い間謎とされて来ました。

 

解糖系でのエネルギー産生では、「効率は悪いが短時間にエネルギー産生が行える」と言うメリットがあります。

 

一方、ミトコンドリア系では「多段階の反応過程を経るので、エネルギー産生に時間はかかるが、効率は非常に高い」と言うメリットがあります。

 

生命の進化という観点から考察してみると大変面白いことが浮かび上がってきます。

 

今からおよそ38億年~20億年までの生命体は、全てが無酸素状態の嫌気的環境で存在する「解糖系生命体」でしたが、海洋のシアノバクテリアの光合成により大気中に多量の酸素が放出されるようになってから、その酸素を活用して効率よくエネルギー産生を行う「ミトコンドリア生命体」が出現するようになりました。

(人間は解糖系生命体とミトコンドリア生命体の合体型)

 

新潟大学医学部大学院教授の安保徹先生によれば。人間が様々の環境的ストレスや悪い生活習慣で、体が「低酸素」「低体温」状態になった時、そのような環境に適応するためにがん細胞(解糖系生命体)が出現したと言います。

 

安保徹先生は、これを「細胞の先祖帰り」と表現していますが、このことは「がん細胞」が、通常考えられているようないわゆる体内の「モンスター」ではないということを示唆しています。

(慶応大学医学部付属病院の近藤誠医師も「ガン細胞はモンスターなどではない」と現代医療のあり方に警鐘を鳴らしています)

 

がん細胞はなぜ「先祖帰り」をするのかと言うことをしっかり考察することで、生体内におけるがん細胞発生の機序を究明でき、その克服の道を見出すことが出来るようになるかもしれません。

 

「がん細胞」と言うと、あたかもがん細胞が生体内で有害な毒素を撒き散らして、宿主をして死に至らしめると言う恐ろしいモンスター的イメージが強いですが、実際は、がん細胞が出す毒素?と思しきものは「トキソホルモン」くらいで、いわゆる「体がだるい」「きつい」「食欲がない」というような症状をもたらすくらいで、これといって生死にかかわるようなものではありません。

 

ただ、がん細胞が発生する部位によっては、周囲の組織や器官などを圧迫したり、侵食したりすることでいくらかの不都合が起こることは有りえます。

しかし、それも適切な対処をすれば恐れるに足らないでしょう。

 

さて、以上の観点よりとりあえずの結論を出してみましょう。

 

がん細胞が「解糖系生命体」という点に着目すれば、人間が環境的ストレスを上手に解消し、体内に取り込まれる有害化学物質(薬剤、食物由来の保存料・発光剤などの添加物、残留農薬、成長ホルモン(食肉)、抗生剤(食肉)、有害放射線など)を出来るだけシャットアウトし、たとえ取り込まれたとしてもそれを上手に分解・解毒・排出するようにすることで代謝を促進し、「低酸素」「低体温」状態をしっかり改善することができれば、がん細胞自身には予めプログラムされているアポトーシス(プログラムされた細胞死/細胞の自殺)のメカニズムがありますので、がん細胞にとって、その存在環境がなくなるので、そのアポトーシスのメカニズムが作動して、自然退縮し、自然消滅に至るということは容易に推察することが出来ます。

 

このように考察すると、がん細胞は「環境に適応した細胞」と見ることもできますが、むしろ宿主の延命を図るために「必要があって生まれた」というのが正確な表現と言えるでしょう。

 

上記の、乳がん患者の例で見れば、パラベンという人体にとって非常に有害な化学物質が限界を超えて体内に取り込まれたとき、生体はそのリスクを回避するために応急的措置として、がん細胞というゴミ捨て場を乳房に作ったとみることができますが、これは、乳がんが「石灰化現象」と言うプロセスを伴うということと合わせで見ても、合理的に理解することができます。

石灰化することで有害な化学物質がそれ以上体全体に拡散しないようにコンクリート化されると見ることができますが、ゴミ捨て場も比較的安全な場所に作られていると見ることができます。

 

さて、ここまではガン細胞発生の現象的理解と克服のための単なるプロローグですが、次の章では更に本質的な理解のために、「がん細胞の存在意義」について「存在論的アプローチ」をして見たいと思います。




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